ニュース 2024.06.26

日経新聞朝刊「私見卓見」欄への掲載(竹内代表理事)

本日の日本経済新聞朝刊の私見卓見欄に、竹内靖典代表理事による「企業は気候関連情報を開示せよ」が掲載されました。投稿時の原文は以下の通りです。

           「企業は気候関連情報を開示せよ」

         コーポレート・アクション・ジャパン代表理事 竹内 靖典

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言し、多くの日本企業もカーボンニュートラルの目標を掲げて達成に向けて取り組んでいる。温室効果ガスを実際に排出している企業、とりわけ高排出企業においては、自ら掲げている目標の達成に向けて着実に進展しているかを行動で示すべき段階に来ている。目標を達成するにはこれまでの延長ではなく、ビジネスモデルの構造的転換が必要だ。

革新的技術の研究・開発は重要で投資を続ける必要があるが、それだけですべてが解決できる保証はない。革新的技術が実装化できる段階になっても、必要なグリーン水素やクリーン電力の確保、コストを含めた経済性の問題など課題が残るからだ。したがって、今後長期間にわたって排出が固定されるような投資を止めるとともに、現在可能な技術の活用を含めた複線的な脱炭素の取り組みが重要となる。

一方で、脱炭素社会の実現に向けては、投資家が果たす役割も大きい。現在のシステムはこれまで長年にわたる資本投資で築かれてきたものだ。目標達成に向けた移行を確実にするためには、50年にあるべき姿からの逆算で現在の投資計画を考える視点が必要となる。

これは投資家にとって、投資先の移行リスクの把握と投融資先の温暖化ガス排出量(ファイナンスド・エミッション)の削減に直接影響してくる。投資家と企業はエンゲージメントを通して移行計画の確度を高めることが重要だが、情報開示はその根幹をなす。

企業が排出削減の長期目標だけでなく短期・中期の目標、投資計画、削減の進捗を開示することは、投資家にとって、持続可能性の観点から企業を評価するために極めて重要な情報だ。また、気候変動を経営上の最重要課題と位置づけているのであれば、役員報酬とひもづけてインセンティブを持たせないと投資家からは空虚な目標と見なされる。

企業が脱炭素への取り組みを行動で示し、その開示を進めて透明性を高めることが、投資家の信頼につながる。投資家とのつながりの深化を通して日本企業が気候変動対策についてリーダーシップをとることを期待したい。