ニュース 2024.12.13

「グリーン購入法に基づく環境物品等の調達の推進に関する基本方針の改定案(環境省)」への意見提出

一般社団法人コーポレート・アクション・ジャパン はオーストラリア企業責任センター(Australasian Centre for Corporate Responsibility: ACCR)とともに「グリーン購入法に基づく環境物品等の調達の推進に関する基本方針の改定案」(所管省庁:環境省)について意見を提出しました。意見を付したのは、改定案において提示された「削減実績量が付された鉄鋼」についてとなります(改定案「別記 定義 1.共通の判断の基準にかかる備考3」に該当)。マスバランス方式の適用について、日本の鉄鋼会社に投資をする投資家の視点を考慮した上で定義や判断基準の再検討を促すものです。

                    (記)

1.改定案文(抜粋)

備考3「削減実績量が付された鉄鋼」とは、一般社団法人日本鉄鋼連盟作成の「マスバランス方式を適用したグリーンスチールに関するガイドライン」の手続に従って削減実績量が証書として付された鉄鋼をいう。  

2.コーポレート・アクション・ジャパン及びACCRによる意見

公共セクターによるグリーン鉄製品の調達を促進し、グリーン市場の創出を図ることを目的とした今回の方針は、脱炭素化に向けた重要な一歩であり評価できる。しかしながら、現時点では、以下の点についてより詳細な検討が必要だと考える。 

消費者や市場に誤解を与える可能性がある 

一般社団法人日本鉄鋼連盟(以下、JISF)の「マスバランス方式を適用したグリーンスチールに関するガイドライン」に基づく鉄製品は、移行期における商品としては活用できうるが、排出削減量が実際のライフサイクルデータに結びつかない限り、消費者や市場に誤解を与える可能性がある。これらの課題に対処するためには、以下のような方策が考えられる。

  • 実際の排出量データに基づく評価基準の設定  
  • 世界的に認められたグリーンスチール基準の使用  

定義や判断基準の検討の必要性

 JISFガイドラインに基づく「削減実績量が付された鉄鋼」の定義について、国際規格との整合性を図り、国際的な信頼性と競争力を高める方向へ見直しがなされることが望ましい。

例えば、JISFガイドラインでは、GHG排出削減量の算定において、組織(会社全体)をバウンダリーとして算定することを認めている。これでは、排出削減策と製造プロセスを結びつけることが困難である。より高い透明性と信頼性、競争力を確保するためにも、削減量を算定するにあたっては、同一生産拠点をベースとすべきである。 

透明性の欠如 

JISFのガイドラインによるマスバランス方式は、排出削減プロジェクトの追加性や削減量の割り当てなど、重要な分野で透明性に欠ける。 

例えば、日本の大手鉄鋼会社のこれまでの排出量の削減は、主に日本国内における生産量の減少によるものであり、体系的な排出削減はなされていない。さらに、第三者認証は、現行のガイドラインの課題を完全に解消するものではない。信頼性を確保するためには、追加性の基準や削減量の管理、割り当て方法の透明性を高めることが不可欠である。 

投資家による懸念

日本の鉄鋼会社に投資をする投資家は、日本の鉄鋼メーカーが世界の同業他社に遅れをとることを懸念している。主要海外鉄鋼メーカーが認証された低ライフサイクル排出量の低炭素鋼を発売するなか、政府が現行のJISFマスバランス方式を認めることで、 日本の鉄鋼メーカーはそれに沿った製品を製造することとなり、結果として将来競争力を失う懸念があるためである。 

                   (了)