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会社法制の見直し中間試案に対するパブリックコメント

 一般社団法人コーポレート・アクション・ジャパンは、法制審議会より示された「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」に対し、パブリックコメントを提出いたしました。私たちは、企業の価値向上と持続的な脱炭素社会の実現を後押しするため、対象企業との「エンゲージメント(建設的な対話)」を重視しています。一方で、対話の進捗状況によっては、次のステップとして株主提案権の行使を検討せざるを得ない局面も存在します。  

 コーポレート・アクション・ジャパンのコメントは、中間試案における「株主提案権の議決権数の要件の見直し」に関するものです。現行の制度では、300個以上の議決権を有する株主に株主提案権を付与しています。これに対して法制審議会は、2案(A案、B案)を示しつつ、株主提案権(議決権数の要件)の行使要件見直しを提示しています。


(中間試案より抜粋) 第5の1 株主提案権の議決権数の要件の見直し

取締役会設置会社における株主の株主提案権の行使要件のうち、議決権数の要件(300個以上の議決権)に関し、次の【A案】又は【B案】のいずれかによるものとする。

【A案】議決権数の要件を廃止する。(注1)

【B案】「300個」という議決権数の要件を、一定の個数(注2)まで引き上げる。(注3)

注1 定款の定めがある場合には議決権数の要件を排除することができるものとする考え方もある。

注2 具体的な個数については、「500個」とする考え方や、今後の投資単位の引下げ等も考慮して「1000個」や「1500個」とする考え方などがある。

注3 ①定款の定めがある場合には「300個」を一定の個数まで引き上げられるものとする考え方や、②【B案】により「300個」を一定の個数まで引き上げた上で、定款の定めにより更に引き上げることができるものとする考え方もある。


 私たちがこのA案、B案それぞれに対して提示した論点、および根拠の詳細は、以下の通りです。引き続き少数株主の意見を届けられるような形での改正にしていただきたいという観点から、私たちは国際環境法律家団体「クライアントアース」のリサーチも参照しつつ、コメントを作成しました。本件に関してお問い合わせをご希望のメディア・機関投資家関係者の皆様は、こちらからご連絡ください。

会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案パブリックコメント

意見1:A案に反対する。

理由(ア)大規模企業における株主提案権の形骸化と制度導入趣旨への逸脱
東証の時価総額上位の企業(1兆円以上)を考えると、100億円以上の保有が必要であり、個人株主はもとより機関投資家ですら株主提案を行うことが著しく困難になる。1981年の株主提案権の導入において、300単位株が導入された理由は、1%以上の要件だけにすると大きな会社において株主提案をする者がいなくなるというものであった。A案では、時価総額上位の企業において株主提案が事実上できなくなり、そのような改正は妥当でない。

理由(イ) コーポレートガバナンス・コードとの不整合
A案は、1%未満の株主からの提案は可決されず、可決されない株主提案は会社にとって無価値であるという論拠に立っている。しかしコーポレートガバナンス・コードでは、会社提案に相当数の反対があった場合には会社が対応を検討すべきとしている。同様に、たとえ株主提案が可決されなくても、相当数の支持があった場合には、会社が対応を検討すべきというのが合理的な解釈である。相当数の支持があった株主提案は、取締役の行動変容をもたらす可能性があり、会社にとって無価値とは言えない。A案の論拠は、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に反する。

理由(ウ) 「資産運用立国」の推進との矛盾
政府が掲げる「資産運用立国」の実現には、個人投資家やアセットオーナー、運用会社が幅広い企業に投資を行い、その成長を促進することが不可欠である。
近年の市場ではパッシブ運用や分散投資が主流となり、個別銘柄に対する一株主あたりの保有比率は低下する傾向にある。こうした「少数株主」の多くは中長期的な目線で投資を行っており、個別の経営陣が見落としがちな中長期的なリスク(気候変動やガバナンス課題など)を的確に指摘し、企業価値の向上に寄与する有効な提案を行うことも多い。保有比率のみを基準に彼らの声を排除することは、株主との対話を重視するコーポレートガバナンスの本質を損なうものであると考えられ、「資産運用立国」の推進と矛盾するものではないか。

理由(エ) 海外投資家の日本の改革期待との逆行
日本のコーポレートガバナンス改革の進展を期待して日本株を購入している海外投資家にとって、投資家の声が届きにくくなるこの改正はコーポレートガバナンス改革の逆行と捉えられるのではないか。日本市場の魅力が低下し、資本流出を招く恐れがあると考える。


意見2: B案につき、議決権数の要件について、現行の1.5倍程度である「500個」を超える法改正あるいは定款による引上げ容認に反対する。

理由(ア) 投資単位引き下げの実態に見合わない要件の大幅引き上げへの反対
「貯蓄から投資へ」の政策方針により、上場会社の投資単位の引き下げが推奨され、株式分割等により株主提案権が制定された1981年当時と比べて、株主提案に必要な投資額が減少したことが法改正が必要となる立法事実であるとすれば、1981年当時と経済的に同等の必要投資額を見出すのが合理的である。東京証券取引所の2025年7月の報告によれば、最小投資単位の引き下げから1981年当時の300単位株(議決権)と同等の水準は441議決権であるとされている。投資単位の引き下げから合理的に説明できる範囲は1.5倍程度の増加までであり、それを超える引上げには根拠がない。

理由(イ) 定款による要件引き上げ容認に伴う提案権の骨抜きへの反対
定款の定めにより300議決権を超えた一定の個数まで引き上げられるとすれば、実質的にA案と同じ結果をもたらすことになる。その立法趣旨からみても300議決権は1%基準の代替ではなく、定款の定めにより300個を一定の個数まで引き上げられる案は大きな会社において株主提案を可能にするという立法趣旨を骨抜きにするものであり認められない。

                          (了)

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